「自分から行動している」とは、どういうことなのでしょうか。
たとえばゲームでは、開始してまもなくモンスターと戦い、経験値やお金を稼ぐという行動を自然に始めることがあります。
しかし、なぜプレイヤーはモンスターと戦うのでしょうか。
多くのRPGでは、シナリオ上のボスやラスボスを倒すという目的が設定されています。そして、そのためには一定以上のレベルや装備が必要になります。
その結果、
- モンスターを倒す
- 経験値を得る
- レベルを上げる
- お金を得る
- 回復アイテムや強い装備を買う
- さらに強い敵と戦えるようになる
- 最終的にボスを倒す
という行動の流れが生まれます。
この構造を「行動の起点」という視点から考えると、仕事や日常生活における行動についても、別の見方ができるようになります。
ゲームでは、行動の起点がゲーム側に設定されている
RPGの例をもう少し整理してみましょう。
プレイヤーがモンスターを倒して経験値やお金を稼ぐという行動自体は、プレイヤー自身が操作しています。
しかし、その行動を必要にしている大元の目的は、プレイヤーが最初から自分で設定したものとは限りません。
ゲーム側が、
「世界を守るためにボスを倒す」
という目的を設定し、そのために、
「強くならなければならない」
という条件を用意します。
さらに、
「敵を倒せば経験値とお金が手に入る」
という報酬の仕組みが用意されています。
つまり、
ゲーム側が目的と条件を設定する → それを達成するための行動が必要になる → 行動すると報酬が得られる
という構造です。
そのため、プレイヤーが自分の意思でモンスターを倒していたとしても、行動の大元にある目的や行動を促す仕組みは、ゲーム側から与えられていると考えることができます。
最初は他者起点でも、行動は自分のものになる
ここで興味深いのは、ゲームを進めていくうちに、プレイヤーが目的を意識しなくてもモンスターを倒すようになることです。
最初は、
「ボスを倒すためにレベルを上げよう」
と考えていたのが、やがて、
「とりあえず敵を倒して経験値を稼ごう」
「お金が足りないから狩りをしよう」
というように、行動そのものが習慣化していきます。
ここでは、もともとゲーム側から与えられていた目的や報酬の仕組みが、プレイヤー自身の行動パターンとして取り込まれています。
つまり、
外部から与えられた行動の理由が、自分の中の行動習慣になることがある
ということです。
では、現実の「仕事」はどうなのか?
ここで、次の2つの仕事を考えてみます。
- 自分の生活を維持するために仕事をする
- 誰かの困りごとを解決するために仕事をする
どちらも「仕事をする」という行動ですが、これだけでは自分起点なのか他者起点なのかは判断できません。
なぜなら、重要なのは「誰のために行動しているか」ではなく、「その行動を始めるきっかけがどこから来たのか」だからです。
「自分起点」とは何か?
ここでいう自分起点とは、
自分が問題を発見し、その問題を解決したいと感じ、その解決手段として仕事を選択すること
と整理できます。
流れにすると、
- 自分が問題や違和感を発見する
- 「これを解決したい」と感じる
- 解決する方法を考える
- その手段として仕事を選ぶ
- 仕事を始める
となります。
つまり、
「仕事をしたいから、解決する問題を探す」
という順番ではなく、
「解決したい問題があるから、その手段として仕事をする」
という順番です。
「自分の生活を維持するために仕事をする」は自分起点?
これは、基本的には自分起点として考えることができます。
たとえば、
自分の生活を維持したい
↓
生活費が必要
↓
その問題を解決する必要がある
↓
その手段として仕事をする
という構造です。
この場合、「自分の生活を維持する」という自分自身の問題が、仕事という行動の起点になっています。
ただし、たとえば「親から働けと言われたから仕事を始めた」という場合は、仕事を始める直接的なきっかけは他者にあります。
したがって、同じ「生活のために働く」という行動でも、その仕事を始めた理由によって行動の起点は変わります。
「誰かの困りごとを解決するために仕事をする」は他者起点?
これも、必ずしも他者起点ではありません。
たとえば、
誰かが困っている
↓
自分がその困りごとを発見する
↓
「自分が解決したい」と感じる
↓
解決する方法を考える
↓
その手段として仕事を始める
のであれば、問題を抱えているのは他者でも、行動の起点は自分です。
たとえば、「この地域には高齢者が買い物に行く手段が少ない」と自分が気づき、「この問題を解決したい」と考えて、移動サービスを仕事として始めたとします。
解決する対象は他者の困りごとですが、最初に問題を認識し、解決しようと行動を起こしたのは自分です。
これは自分起点と考えられます。
誰かに頼まれた場合は他者起点になる
一方で、
誰かから「この問題を解決してほしい」と頼まれる
↓
依頼を受ける
↓
仕事として解決する
という場合は、行動を始めるきっかけが他者から与えられています。
この意味では、他者起点と考えることができます。
したがって、
- 自分から問題を発見して解決しようとした → 自分起点
- 誰かから問題を提示され、解決を頼まれて行動した → 他者起点
という整理ができます。
ただし「誰かのために行動する=他者起点」ではない
ここは特に重要です。
「自分起点」と「他者起点」を、「自分のため」と「他人のため」で分けると混乱します。
なぜなら、他者の問題を、自分が解決したいと思って行動することもあるからです。
たとえば、
「子どもたちが安心して遊べる場所が少ない」
↓
「この問題を何とかしたい」
↓
「自分が事業を立ち上げよう」
↓
仕事として解決する
これは「誰かのため」の行動ですが、自分起点です。
逆に、
「会社から、この顧客の問題を解決してください」と言われた
↓
仕事として解決する
なら、他者起点の行動です。
つまり、
「誰の問題なのか」と「誰が行動を起こしたのか」は別の問題です。
自分起点と他者起点を図にすると分かりやすい
自分起点
自分が問題を発見
↓
自分が「解決したい」と感じる
↓
自分が解決手段を考える
↓
仕事を選択する
他者起点
他者が問題を発見・提示する
↓
他者から依頼・指示される
↓
自分が依頼を受ける
↓
仕事として解決する
行動の起点を見るための3つの質問
自分の仕事が自分起点なのかを考えるときは、次の3つの質問をすると整理しやすくなります。
- 最初に「問題がある」と認識したのは誰か?
- 「この問題を解決したい」と思ったのは誰か?
- その問題を解決するために「仕事をする」という手段を選んだのは誰か?
たとえば、
自分が問題を発見した
↓
自分が解決したいと思った
↓
自分で仕事という手段を選んだ
のであれば、かなり明確な自分起点です。
一方、
他者から問題を与えられた
↓
他者から解決を頼まれた
↓
依頼された仕事として行動した
のであれば、他者起点の性質が強くなります。
「頼まれたけれど、自分も解決したい」と思った場合
現実には、完全に自分起点・他者起点のどちらかに分けられないケースもあります。
たとえば、最初は会社から、
「この顧客の問題を解決してください」
と頼まれたとします。
しかし、その問題について調べていくうちに、
「確かにこの問題は解決したほうがいい」
「自分もこの問題を解決したい」
と思うようになることがあります。
この場合、最初の行動のきっかけは他者から与えられていますが、その後、自分自身の問題意識として引き受けていると考えることができます。
そのため、行動の起点は「最初から最後まで完全に自分か他者か」という二択ではなく、途中で変化することもあります。
「仕事が起点」なのか「問題が起点」なのか
ここまでの話から、仕事について考えるときに一つの重要な違いが見えてきます。
「仕事」を先に置くのか、「問題」を先に置くのかです。
仕事が先の場合
仕事をする
↓
給料を得る
↓
生活を維持する
この場合、「仕事」が行動の中心になっています。
問題が先の場合
解決したい問題がある
↓
解決方法を考える
↓
その手段として仕事をする
この場合、「問題」が行動の起点になっています。
自分起点という観点では、後者のように「解決したい問題が先にあり、仕事がその手段になる」という構造が重要になります。
ゲームと仕事の共通点
最初のゲームの例と仕事を並べてみると、共通する構造が見えてきます。
| ゲーム | 仕事 |
|---|---|
| ボスを倒す | 問題を解決する |
| 必要なレベルになる | 必要な能力・知識を身につける |
| モンスターを倒す | 仕事をする |
| 経験値を得る | 経験・スキルを得る |
| お金を得る | 給与などの報酬を得る |
| 装備を整える | 生活や仕事に必要な資源を整える |
ゲームでは、ゲーム側が「何を達成する必要があるのか」を設定します。
仕事でも、会社や顧客などが「何を解決する必要があるのか」を設定し、それを仕事として引き受ける場合があります。
一方で、自分自身が問題を発見し、その解決のために仕事をつくることもできます。
この違いが、「与えられた行動」と「自分から始めた行動」の違いにつながります。
まとめ:自分起点とは「自分が最初に動機をつくった状態」
「自分起点」を考えるとき、「自分のためか、他人のためか」で判断すると分かりにくくなります。
より重要なのは、
「その問題を認識し、解決しようとする最初の動機がどこから生まれたのか」
ということです。
そのため、
- 自分の生活を維持するために仕事をする → 自分の問題が起点なら自分起点
- 誰かの困りごとを解決する → 自分が発見して解決したいと思ったなら自分起点
- 誰かに解決を頼まれて仕事をする → 依頼が行動のきっかけなら他者起点
と整理できます。
最も大切なのは、「誰の問題なのか」ではなく、「誰が問題を認識し、誰が解決しようとして行動を始めたのか」を見ることです。
そして、自分起点の仕事とは、
「自分が解決したい問題を見つけ、その解決手段として仕事を選ぶ」
という順序で捉えることができます。
つまり、仕事を「目的」として見るのではなく、「自分が解決したい問題に向かうための手段」として見ることが、「行動の起点」を考えるうえでの大きなポイントになります。

