「どこで、どんな仕事をして働けばいいのかわからない」
「そもそも、自分は働きたいのか働きたくないのかもわからない」
そんな状態になると、転職サイトを眺めたり、適職診断を受けたり、「自分に向いている仕事」を探したりしたくなります。
しかし、こうした方法では、なかなか答えが見つからないことがあります。
なぜなら、問題は「どの仕事が自分に向いているか」ではなく、そもそも自分は何のために働きたいのかがわかっていないことかもしれないからです。
そこで、いったん発想を逆転させてみます。
もし、すでに最低限の生活費を確保できていて、生活防衛資金も十分にあり、余剰のお金まであるとしたら。
お金のために働く必要がなくなったとして、それでも何か仕事やビジネスをするとしたら、何をしたいだろう?
この問いから考えると、「働きたいのか、働きたくないのか」「会社員がいいのか、独立したいのか」「どんな仕事がしたいのか」を、少しずつ整理できるようになります。
「何の仕事がしたい?」と聞かれても答えられない理由
仕事について悩んでいると、よくこんな質問をされます。
- 何が得意?
- 好きなことは?
- 将来何になりたい?
- どんな仕事をしたい?
- 年収はいくら欲しい?
- どんな会社に入りたい?
でも、これらに答えられなくても不思議ではありません。
「仕事」という言葉には、実はたくさんの要素が混ざっているからです。
たとえば、次のようなものです。
- 人と話す
- 人を助ける
- 何かを作る
- 問題を解決する
- 情報を集める
- 誰かに教える
- 商品を売る
- 文章を書く
- 技術を磨く
- 身体を動かす
- 一人で集中する
- チームで協力する
- 自分で時間を決める
- 決められた時間に働く
- 組織を運営する
- 商売をする
これらはすべて「仕事」になり得ます。
つまり、
「どんな仕事がしたい?」
という問いは、実はかなり大きすぎるのです。
まず「働きたい」を分解してみる
「働きたいか、働きたくないか」を考える前に、何を嫌がっているのかを分解してみましょう。
たとえば、「働きたくない」と思っていても、本当に嫌なのは労働そのものではないかもしれません。
会社に行きたくない
でも、自分で決めたことなら一日中やっていられる。
この場合、「働きたくない」のではなく、拘束されることが嫌なのかもしれません。
仕事はしたくない
でも、趣味や創作には何時間でも没頭できる。
「何かをすること」が嫌なのではなく、他人の目的のために時間を使うことが嫌なのかもしれません。
人と関わる仕事は嫌だ
でも、親しい人の相談に乗るのは好き。
「人間関係」が嫌なのではなく、職場特有の人間関係が嫌なのかもしれません。
お金のためなら働きたくない
でも、誰かの役に立つことにはやりがいを感じる。
「労働」そのものより、お金を目的にすると自分のモチベーションが下がるタイプなのかもしれません。
このように、「働きたくない」という感覚を一言で片付けないことが重要です。
逆の発想:「お金が必要なかったら何をする?」
ここで、最初の問いに戻ります。
仮に、次の条件がすべて満たされているとします。
- 最低限の生活費は確保されている
- 家賃や食費などに困らない
- 生活防衛資金がある
- 将来のためのお金もある程度確保されている
- 明日仕事を辞めても生活が破綻しない
- 「働かなければならない」というプレッシャーがない
そして、誰からも「働け」と言われない。
その状態で、あなたには毎日自由な時間があります。
そこで考えます。
朝起きてから寝るまで、その時間を何に使いたいですか?
ここでは「お金になるかどうか」を考えません。
「役に立つか」も考えなくて構いません。
「将来のキャリアになるか」も考えません。
ただ、
自分が時間を使いたいと思うものは何か?
を考えます。
「何もしない」という答えも大切
ここで、
「別に何もしたくない」
という答えが出ても問題ありません。
むしろ、それは重要な発見です。
ただし、そこで終わらせずに「何もしない」の中身を考えてみます。
たとえば、次のようなものです。
- ひたすら寝たい
- ゲームをしたい
- 映画を見たい
- 旅行したい
- 家でゆっくりしたい
- 家族や友人と過ごしたい
- 趣味に時間を使いたい
- 勉強したい
- 何かを作りたい
- 自然の中で過ごしたい
「何もしない」と言いながら、実際には何らかの活動をしたいケースもあります。
重要なのは、「仕事をしたいか」ではなく、「自分の時間を何に使いたいか」です。
「お金をもらえなくてもやりたいこと」を探す
仕事について考えるとき、非常に参考になる質問があります。
質問1:お金を1円ももらえなくてもやりたいことは?
たとえば、次のようなものです。
- 文章を書く
- 人に何かを教える
- 料理をする
- ゲームを作る
- 研究する
- 人の相談に乗る
- 商品を作る
- 旅行する
もちろん、「何もない」という答えでも構いません。
質問2:誰にも評価されなくてもやりたいことは?
SNSの「いいね」も、年収も、肩書きも、他人からの称賛も全部ないとします。
それでもやりたいことは何でしょうか。
これは、自分の内側から出てくる欲求を考えるのに役立ちます。
「人から評価されたいからやりたい」のか、「評価されなくても自分が面白いからやりたい」のか。
この違いは、仕事選びを考えるうえでかなり重要です。
質問3:逆に、お金をいくらもらってもやりたくないことは?
こちらも同じくらい重要です。
たとえば、
- 年収1,000万円でもやりたくない
- 週3日ならできるけど、週5日は嫌
- 一人ならできるけど、営業は嫌
など、自分の「嫌」を具体化していきます。
仕事選びでは「好きなこと」ばかり探しがちですが、嫌なことを明確にすることでも、自分に合う環境が見えてきます。
「好きなことを仕事にする」必要はない
ここで注意したいのは、
「好きなことを見つけて、それを仕事にしよう」
と単純に考えすぎないことです。
好きなことを仕事にした途端に、納期、顧客、売上、責任、競争などが発生し、好きだったものが嫌いになることもあります。
そのため、
「好きなこと=仕事にするべきこと」
とは限りません。
むしろ、
好きなことは好きなまま残しながら、別の仕事で生活を支える
という選択肢もあります。
逆に、
「自分がやりたいことを、誰かに価値として提供してみたい」
と思えるなら、それを仕事やビジネスに変えていくこともできます。
「自分のビジネスを持つなら?」という視点
ここでも、「何を売れば儲かるか」から考える必要はありません。
まず、
自分がやりたいことを、誰かに提供するとしたら何を提供できるだろう?
と考えてみます。
たとえば、
- 自分の知識を教える
- 人の悩みを聞く
- 面倒な作業を代わりにする
- 情報を整理する
- 商品を作る
- コンテンツを作る
- 人と人をつなぐ
- 場を作る
- 技術をサービスとして提供する
- 好きなものを紹介する
ここで初めて、
「自分がやりたいこと」と「他人が価値を感じること」
の接点を探します。
これが、個人事業やフリーランス、起業などを考えるときの出発点になります。
「どこで働くか」は最後に考える
「どこで働けばいいかわからない」という悩みも、実は順番を逆にすると考えやすくなります。
いきなり、
- 東京と地方のどちらがいい?
- 会社員とフリーランスのどちらがいい?
- どの会社に転職する?
と考えるのではありません。
まず、次の順番で考えてみます。
- 何に時間を使いたいのか
- どんなことはしたくないのか
- 誰と関わりたいのか
- どのくらい自由が欲しいのか
- どんな生活リズムがいいのか
- その活動にはどのくらいのお金が必要なのか
- それを実現する働き方は何か
そうすると、「職業」ではなく自分が望む生活の条件が見えてきます。
仕事ではなく「生活」から考える
たとえば、最終的にこんな答えになるかもしれません。
一人で集中する時間が多いほうがいい。
ただし、完全に人と関わらない生活は寂しい。
毎日同じ時間に出社するのは嫌。
自分で仕事の進め方を決めたい。
何かを作って、その成果物が残る仕事がいい。
収入は高ければ高いほどいいわけではない。
それより自由な時間が欲しい。
この条件がわかれば、初めて次のような働き方を比較できます。
- 会社員
- リモートワーク
- フリーランス
- 個人事業
- 複業
- 小さなビジネス
- パートタイム
- 非営利活動
- 趣味として続ける
つまり、「自分に合う仕事を探す」のではなく、「自分に合う生活を実現できる仕事の形を探す」という考え方です。
「働きたくない」から始めてもいい
「働きたいことがない」という状態は、必ずしも悪いものではありません。
世の中には、
- 好きな仕事を見つけよう
- 夢を持とう
- やりたいことを仕事にしよう
というメッセージがたくさんあります。
しかし、全員が仕事に人生の意味を求める必要はありません。
仕事は生活を維持するための手段でもあります。
仕事以外に、
- 家族
- 友人
- 趣味
- 学習
- 旅行
- 創作
- 自分の時間
に人生の価値を感じる人もいます。
だから、
「仕事に人生の目的を求めなくてもいい」
という選択肢も持っておいたほうがいいでしょう。
それでも「何かしたい」が残るなら、それがヒント
一方で、お金の心配がなくなったとしても、
- でも、何か作りたい
- 何かを極めたい
- 誰かの役に立ちたい
- 自分のサービスを作ってみたい
- 小さな店をやってみたい
- 文章を書きたい
- 研究したい
という気持ちが残るなら、それは非常に興味深いものです。
それは必ずしも「天職」ではありません。
しかし、自分が時間を使いたいと思える対象です。
まずはそこから、小さく試してみればいい。
最初から「これを一生の仕事にする」と決める必要はありません。
最初から「正解」を決めなくていい
仕事選びで苦しくなる理由の一つは、
「一度選んだら、その道をずっと進まなければいけない」
と思ってしまうことです。
でも実際には、仕事も生活も変えていいものです。
たとえば、
最初は会社員として働く。
↓
興味のあることを副業で試す。
↓
面白ければ時間を増やす。
↓
独立する。
↓
やっぱり違えば会社に戻る。
そんな進み方でも構いません。
大切なのは、頭の中だけで「自分に向いている仕事」を決めようとしないことです。
小さく試して、自分の反応を観察する。
そのほうが、自分について得られる情報は多くなります。
「お金に困らない自分」から仕事を考える
結局のところ、この問いは、
「お金がなくても働くか?」
だけを考えるためのものではありません。
もっと大きな意味があります。
お金の制約を一度外すことで、
「自分は何に時間を使いたい人間なのか」
を考えられるからです。
そして、そこから、
何をしたい?
↓
何をしたくない?
↓
どんな人と関わりたい?
↓
どんな時間の使い方をしたい?
↓
どんな生活をしたい?
↓
その生活にはいくら必要?
↓
その条件を満たす働き方は?
と逆算していきます。
まとめ:「何の仕事をするか」より先に「どう生きたいか」
「何をして働けばいいかわからない」とき、いきなり職業を探す必要はありません。
まず考えたいのは、
もし、お金に困らないとしたら、自分は何をして時間を過ごしたいのか?
ということです。
そこで、
「何もしたくない」
という答えが出てもいい。
「趣味だけしたい」でもいい。
「人の役に立ちたい」でもいい。
「何かを作りたい」でもいい。
「自分のビジネスをやってみたい」でもいい。
大切なのは、そこからさらに、
「なぜそれをしたいのか?」
を掘り下げることです。
そして最終的に探すべきなのは、必ずしも「天職」ではありません。
自分が納得できる時間の使い方と、それを維持できる生活の仕組み。
それが見えてくれば、「どこで働くか」「何を仕事にするか」は、その後から選んでいけます。
仕事を先に決めて人生を合わせるのではなく、自分が送りたい生活から逆算して、仕事の形を選ぶ。
「働きたいのか、働きたくないのかすらわからない」という人にとっては、そんな順番で考えてみることが、最初の一歩になるかもしれません。

